【エッセイ】一億総詩人化計画

私が書いた詩の中に「一億総裁判官」というものがある。

犯罪ではないことでも、人は人のことを裁く。自分の趣味嗜好に合わないものや人に物申したくなるのだ。特にSNSでは遠慮がない。

物申す立場にない人が物申している姿は滑稽に見える。私も気をつけてはいるが、他人から見たら滑稽な人になっているかもしれない。

だから私はよく詩を書く。おしゃべりだといらぬ一言どころか二言も三言も言ってしまうかもしれないようなことは、詩にするとスマートになる。本当に伝えたいこと、物事の本質はシンプルなはずなのに、おしゃべりすると余計な尾ヒレがたくさんついてただの文句や愚痴になりかねない。

余程自分に好意を寄せてくれている人なら聞いてくれるかもしれないが、SNS発信にはその媒体に応じた公共性が求められる。

とは言っても人間は感情の生きものだから、正直言って聖人君子になるのは難しく、気持ちを抑圧し続けるのも辛い。

そこで便利なのが詩を書くことだ。

詩とは不思議なものだ。しゃべり言葉にはない優しさがある。言葉の表面が鋭利に見えても、本質を語っている詩には慈愛を感じる。

短い言葉から何を言いたいのかを想像する。想像することは人を優しく忍耐強くする。

詩を書くようになれば、人を刺すような気持ちですら相手を傷つけずに昇華できる。

もしも一億総詩人化計画が成功したならば、もっと優しい世界が広がるのではないか…夏も終わり秋の気配が近づく9月、ふと思いを巡らせた。芸術の秋に、あなたも詩を書いてみませんか?

https://stand.fm/episodes/64f920e4dd9934cbc811f000