代役

ロングランの舞台には代役がたてられる

代役で舞台が成り立つのは役の個性と物語があらかじめ決まっていて変更不可だから

でも私の舞台に代役はいらない

代役が私らしく振る舞ってもボロが出る

厄介なのは代役を務めるのも私なのだ

私は複数いるらしい

本物と偽物は紙一重

私を代表する監督は胡座をかいて

静寂の中で鎮座していなければいけない

司令塔は右往左往せずに堂々としているほうがいい

私の物語はロングランされている舞台とは違う

一度きりだから代役では務まらない

物語は日々上書きされて少しずつ完成に近づいていく

毎日即興演奏しているのだ

色んな声が話しかけてくる

たまに代役に一本取られる

でもそのあと取り返す

その繰り返し

監督はあきれているかもしれないし

にこやかに微笑んで自分の声に気がつく

私を気長に待ってくれているかもしれない

理想は監督と一人二役になれることだ

代役を卒業した気になっても

やっぱり代役がまだ幅を利かせている

代役はやたらと自己主張がつよい

代役も一緒に引き連れて監督に弟子入りしたほうがよさそうだ

いつか融合できたら…そのときはあがり

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