【エッセイ】一期一会

一期一会…誰でも聞いたことがある日本のことわざ。

最近改めてこの四字熟語の意味を噛み締めている。

人は生まれてくる時も死ぬ時も一人きり。

社会生活を営んで人間関係を築いていても、根底では孤独の精神が常につきまとう。

人間はどう足掻いても孤独だけれど、一人きりでは生きられないから同じ人間と関係を結ぶ。

人間関係を面倒だと思いながらも、誰かと繋がり心を通わせたいと思ったり、認められたいと思ったりする。

そのためにはある程度持続的で固定した関係性が必要になる。

だからリアルな生活でもSNSでも強固な絆を結びたいと考える人もたくさんいる。

でも私は「絆」と呼ばれるものには注意が必要だと思う。

その「絆」というのは一方が感じているだけでは成立しない。

しかも持続的に、というのはかなり難しい。

人間は心変わりする生きものだから。

そして関係が強固なものほど自由を奪われる。

自由と絆を天秤にかけると、強固な関係というものを手放しでは喜べない。

そんな難しいことに悩むぐらいなら「一期一会」の言葉通りに、一瞬一瞬を大切に生きるほうが余程幸せだと感じる。

今日も明日も明後日も関わるであろう人との関係も変わらない持続的なものだと思わずに接する。

安心な人間関係を担保しようと考えてしまうのは、自然なことで決して悪いことではない。

でも安心を担保するために相手に執着して生霊を飛ばしたりするのは最悪。

安心を担保しようとして人間関係を必要以上に広げすぎると自分に向き合う時間を失くし、自分の人生を失う。

人生とは天秤ばかりを両手に持ちながら綱渡りしているようなもの。

たくさんのものを抱えてバランスを維持するのは難しい。

だから「一期一会」の精神で生きていく…それが身軽でいい。

担保のない人生は不安で孤独かもしれない。

でもそれを受け入れる覚悟があれば、とても気持ちのいい人間になれる気がする。

今日も「一期一会」で繋がれたあなたに、ありがとうと言いたい。

https://stand.fm/episodes/65169732a423879eed1710a4