【小さなお話】テントウ虫のお天道話

テントウ虫たちが

テントの中で一服しながら

灯を点灯(テントウ)して

おテントウ(お天道)さまの

話をしている。

なになにどんな話?

ちょっと聴いてみましょうか。

 

「わしらの命は短いけれど

わしらは立派な存在なんだ」

「あぁ、そうだとも」

「なんてったってお天道さまの遣いを頼まれているからなぁ」

「わしらはお天道さまに向かって天高く舞い上がる。そして舞い降りてきては地上に幸運をもたらすのさ」

「そうそう」

「人間たちはわしらが家に舞い込むと縁起がいいと言って喜んだりする」

「畑では害虫駆除にも役立つから人間に喜ばれている」

「うん、その通りだ」

「まぁ害虫なんて呼ぶのは人間だけだけどな」

「わしらの世界では上も下も良いも悪いもない」

「そのとおり」

「お天道さまのエネルギーはそりゃあもうすさまじい。だからわしらのこの小さな身体ではそう長くはもたない」

「でもお天道さまの遣いをやめるわけにはいかないだろう?」

「もちろんだとも」

「だから年がら年中命のリレーを欠かさず続けるわけだ」

「そうだな」

「はぁ~、もうそろそろお迎えがきちまうな」

「そうだな」

「迎えに来るのはもう何回目だ?」

「さぁな…忘れちまったよ」

「わしもだ」

「お天道さまはいつも明るい」

「そんなお天道さまのもとに還るんだ」

「怖くも寂しくもないさ」

「あぁ、そうだな」

「でもな、次に還った時はちょっとお天道さまにお願いしてみようと思ってよ」

「何をだ?」

「試しに一度人間に生まれてみたいですってな」

「そりゃあお天道さまもひっくり返って転倒(テントウ)しちまうかもな」

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